Stories and Studies in Sound.


ああ偉大なるLT計画


私は以前からLinkwitz transformというものに興味を持っていました。国内サイトでも「Q値の再定義」というかたちで同様の設計をされていた方がいました。rarakiさんとhasidaさんです。以下のページが参考になります。

http://homepage1.nifty.com/ultimedia/theory/raraki0.htm
http://homepage1.nifty.com/ultimedia/theory/raraki1.htm
http://www.katch.ne.jp/~hasida/speaker/speaker16.htm
http://www.katch.ne.jp/~hasida/speaker/speaker17.htm


ここでは、Linkwitz transformを用いて密閉箱の特性を広帯域化することを念頭に置いた製作について、紹介します。


このLT計画は以下の3部門から構成されます。

■ アクティブクロスオーバー(ACX)製作部門
■ ウーファー密閉箱製作部門
■ LT製作およびACXへの搭載部門


順次一つずつこなしていこうと思います。なお、噂によると、LT計画は実は4部門からなるそうで、上記に含まれていない残り一つは、パワーアンプ製作部門だそうですw 本当にやれるのかな。





ACX部門について


この計画は、言うまでもなく「マルチアンプ環境への移行」でもあります。


通常、市販のスピーカーというものは、パッシブ型のフィルター回路を搭載しています。これらはパワーアンプから送られてきた信号を個々のユニットに振り分ける、スピーカーにはなくてはならない構成部品です。ときおりこのパッシブ型のフィルター回路を毛嫌いする方々を見かけます。曰く、ネットワークを介した音には生気がないと。ちなみに、同様の観点からフルレンジ至上主義に傾く方は「頻繁に」見られます。





この計画は、その生気に満ち満ちた音というものを聞いてみようじゃないかという気分と、ウーファーと低いクロスを取るならアクティブクロスオーバーの方が楽だなという目論みから立ち上げられました。


全体の構成としてはこうなる予定です。





今回製作するアクティブクロスオーバー(チャンネルデバイダーとも言う)は、カットオフ周波数が500Hzに設定されたハイパスおよびローパスフィルタを2個ずつ持つ、2way用のものです。フィルタはリンクウィッツ・レイリー4次とします。


ハイパス出力は現用の小型スピーカー側に送り、このスピーカー内で、パッシブクロスオーバー(カットオフ周波数4.1kHz)によってミッドとツイーターに振り分けます。ローパス出力は、新たに製作する密閉箱に送ります。使用するドライバはまだ未定ですが、seasのL22RN4Xあたりが好適だと思っています。


アクティブクロスオーバーが完成した後、密閉箱を作って、その特性からLinkwitz transformによる補正値を決定してこれを作成し、アクティブクロスオーバーに乗せる、と。ここまでがLT計画であります。



How to build

アクティブクロスオーバー(チャンデバ)の自作は、思っているほどおおげさなものではないみたいです。例えばこれ。

http://www.siliconchip.com.au/cms/A_30278/article.html

拍子抜けするほど非常にシンプルなつくりになっています。こういう具合にやればそれで十分なんでしょう。このページは何気に丁寧でして、代表的なカットオフ周波数とそのときの定数の一覧表や、基盤パターン図(EPSフォーマット、ページの最後に掲載されている)まで公開しています。これから作ろうと考えている方はぜひどうぞ。


私はESPのところを参考にしました。

http://sound.westhost.com/project09.htm

このページの最後に定数計算用のプログラム("esp-lr12.exe")が公開されています。これを用いて計算したところ、R=10kΩ、C=0.022uFで、511Hzのカットオフ周波数をもつリンクウィッツ・レイリー4次のローパス・ハイパスフィルタが作れるようでした。


回路図はこうなります。





入力バッファがエミフォロになっていますが、別にオペアンプICでも良かったと思います。フィルタ部のICはNJM2114Dです。出力バッファがありませんが大丈夫だろうと踏んでいます。電源部はLM337だったかのデータシートに載ってる安定化正負電源の回路図をまんま参考にしました。LM333だったかもしれない。


    


写真は、左が電源部、右がフィルタ部です。フィルタ部は小さくまとめすぎました。改修は困難を極めます(困難を極めています)。完成後の姿を眺めたのが以下の写真です。





LTが収まるスペースを空けてあります。今思ったんですけど、LTってあれ反転出力ですね。出力バッファかますのか面倒だな。



後始末


別に大したものではありませんが、Speaker Workshopでちょこちょこっと工夫してこのアクティブクロスオーバーの特性を観察してみました。はいどうぞ。





実線はレベル特性、破線は位相を示しています。
赤線はハイパス出力、青線はローパス出力、緑線は合計した特性です。


狙い通り約500Hzにカットオフ周波数が来ていること、その付近では合計した特性に乱れがないことが分かります。ローパス出力とハイパス出力のカットオフ周波数がほぼ同一であることを表しています。


ローパス・ハイパスともに、カットオフ周波数から2オクターブあたりから位相が乱れまくるようですが、何かまずいことになってるんでしょうか。単に測定上の問題だと嬉しいんですが。それと、20Hzで少しレベルが落ちています。なんでしょう。


現在はLTなしでアクティブクロスオーバーとして使用しています。パッシブのクロスオーバーネットワークと比べて、言うほど別世界を感じさせるような音質改善ではないという印象ですが、もう少し様子を見ます。




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