Stories and Studies in Sound.


Tips and tricks of tasting loudspeakers


Wavespectraでサインスイープ信号のピークホールドって、本当に信用できるのか





結論から申し上げます。全く信用できません(一般的な居室内においては)。

どの点において信用ならないのかと申しますと、ドライバ間の位相の関係を捉えるという点においてです。

拙作Chevillonは密閉3wayなのですが、ウーファーのみ逆相で接続するようになっています。ウーファーとミッドのクロスオーバー周波数は500Hz。

このときの相対音圧レベル特性を擬似無響室測定で観察したのが以下のグラフ。入力1.0ワットで、例によってARTAで見てます。stimuli(測定用信号)にはMLSを用いています。なお縦軸のデシベルの値は正確ではないので相対的な評価とお考え下さい。





ウーファーを正相に接続するとどうなるか。





むごごご。マイク位置によるんですが、ツイーター軸上では約500Hzにきれいなリバースヌルが生じます。

この状態のまま、stimuliとしてサインスイープを使ってインパルス応答を観察するとどうなるか。・・・ワケワカメな表現に見えるでしょうが、ARTAにはそんなのも用意されているんですよ。ヘルプにはこの点に関する数学的な解説が載っております(私は理解してませんが)。





まあほとんどMLSを使ったときと一緒ですわな。一般に、外来ノイズ耐性という点ではサインスイープよりMLSの方が優れているようです。ここではほぼ同等のレベルに見えていますけども。


・・・さて、Speaker Workshopにてサインスイープ信号(20Hz - 20kHzに200個のステップを設けたもの)を作成してこれを再生し、Wavespectraでピークホールドしてそのスペクトラムを観察します。もちろんマイク位置は今までと一緒。この手法が使える手法なら、上のグラフで見られたような強烈なディップが500Hz付近に見られるはずです。





ほらね。一様にフラットな特性に見えます。まあフラットじゃないけど。低域が上がっているってのもタチ悪いですね。低域のレベルを過大評価することにも繋がってしまうので、やっぱダメなんですよこのやり方。実際の状態を反映していないデータをいくらブログに上げても、誰も信用してくれないですよ。


【追記】
ここで用いたサインスイープ信号はlogスタイルと呼ばれるもので、-3dB/octの特性を持ったものだそうです。低域で高いレベルを示すのは当たり前ということになります。そういうわけで、必ずしも「低域のレベルを過大評価することにも繋が」るということはないです。linearスタイルのほうが用途に向くらしいので、まだこの手法で逝きたい方はそちらをどうぞw


そういうわけで、Wavespectraでピークホールドしてる方々、塩ビ管一派とフルレンジ派に多いと思うけど、音響測定を糧にしてより良いものを作りたいと願うなら、それ可及的速やかに辞めなさい。ARTA使えARTA。チュートリアルはわたくしめが準備しますから。





Revisiting the peakhold・・・

2007/08/11より公開


(まだ書きかけです。少しずつ更新していきます。)

以前の状態から構成が変わってしまったので、実は追試の体を成していません。それでも結論をいうと、極めてゆっくり掃引すると私の環境下でもリバースヌルらしきディップを観察することができる、といった感じになります。ただしそのディップの具合は、ARTA等によってインパルスレスポンスから得たものとは異なります。

efuさんによる検討はこちら。
http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/temp/peakhold.html




環境としては以下のような具合。

・マイクはECM8000、サウンドカードはENVY24HTS-PCI
・和室6畳間、スピーカは一本だけ使用
・スピーカの背後の壁までの距離約70cm、
    向かって右側の壁までの距離約90cm
・マイク位置はツイータ軸上、床からの高さ約70cm
・マイク―ツイータ間距離は1m
・スピーカ入力レベルは200Hzのサイン波にして2.8V
・サウンドカードへの入力レベルは
    (0dBで過大入力として)-15dBくらい
・反射波対策はほとんどしていない



まずARTAでの比較。測定条件は、サンプリングレート48kHz、FFTサイズ16k、刺激信号はlog swept sine。


右図は正しい接続の場合。
ヌルにはなってない。


こちらがヌルになる接続の場合。
350Hzと550Hzに-8dBくらいのディップが観察される。

上に示した2007年3月末の時点でのリバースヌルよりもかなり浅いし、周波数も異なる。公開当初からこの4ヶ月間にあった変化としては、Linkwitz transformを導入したことと、ミッド、ツイータを交換したことの2点があげられる。それらの影響かもしれない。



続いてWavespectraでピークホールドする方法。刺激信号は、Wavegeneで作成した、200Hzから800Hzまで2分間で掃引するlog swept sine。これは極端に長い。Wavespectraの設定は、サンプリングレート44.1kHz、FFTサイズ16k、時間窓はハニング窓。

右図は正しい接続の場合。260Hzや600Hzのほか、さまざまな鋭いディップが観察されている。


ヌルになる接続の場合。
510Hzに約-20dBのディップが見られる。しかしARTAで見たものとは周波数が異なり、また、かなり鋭い。






・・・この比較検討の様子を動画で見てみる

FinePix V10の動画撮影機能を利用して撮影。元は.avi形式で各100MB超のものですが、圧縮して10MBくらいにした.wmv形式のものを公開します。ヌルにならない場合とヌルになる場合とで2編に分けてあります。それぞれについて、ARTAでの観察の直後にピークホールドでの観察をおこなっています。タイトルを挿入した以外は編集なしのロングショットw

ちなみに2007年4月に公開した動画はこちら(.mpeg形式で35MB。撮影に不備があってノイズが酷いので無かったことにしたい)。この動画は、ヌルになるような接続の場合で、開始から1:30あたりで500Hzに相当するサイン波が見れているはず。
http://www.daredevil.cn/img/ssph_movie.mpg


・ヌルにならない場合(正しい接続の場合)
http://www.daredevil.cn/sw/tips/posi.wmv

・ヌルになる場合
http://www.daredevil.cn/sw/tips/null.wmv


これらの動画で聞ける音声は撮影用カメラが拾ったものです。測定用マイクが拾ったものとは違います。終始「フイイイイイイ」というノイズが聞えていますが、これはパソコンと撮影用カメラが近かったせいで拾ってしまったパソコンのファンの音です。測定用マイクとパソコンの距離は2m以上あるので、そちらにはほとんど入っていないと思います。一部の領域で音声が小さくなっているように聞えるのは部屋の定在波の影響ではないでしょうか。


・・・ついでだからBroadcast yourselfしてみました(ふざけすぎだ


・ヌルにならない場合(正しい接続の場合)




・ヌルになる場合
    550Hzに相当するサイン波は残り1:04の表示のときにみられています。
    510Hzで見られる-20dBのディップは残り1:07の表示のときにみられています。





「ヌルになる場合」でのマウスカーソルの動きが紛らわしいですね。すいません。

レベルメーターに注目すると気がつくと思いますが、ヌルになるような接続だろうがそうじゃなかろうが、特に600Hz以上の領域でピークがかなり上下しているのがわかります。



小まとめ



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